計装研究会は、昭和28年北九州所在の各社技術有志の勉強会として始まったものです。
当時は、東大の高橋安人先生等が自動制御研究会で、制御技術の普及に活躍しておられた時代で、 各会社共、自動制御の勉強が始まったばかりでしたが、旭硝子:森龍太郎氏(故人)、 北辰電機:原崎郁平氏、三菱化成:瀬藤進一氏等が各社を遊説し、有志の勉強会をはじめることになりました。
しかし、実際やってみると、個人では時間が自由にならないので、昭和28年からは当時通産省の指導で 華々しい活動をされていた熱管理運動の北九州地区会の下部組織(計測部会) として活動することになりました。
当時の例会は毎月会員工場持ち回りで行い、新しい海外文献の紹介および計器の勉強 (例えば、電子管式自動平衡計器討論会(4回)、温度計、流量計、ガス分析計等の討論会を各3~5回開催) 等毎月5編ぐらいの会員発表があり、昭和28年9月から昭和31年11月までに、33回例会を開き、 104件の発表があり出席工場延べ1,266社出席者延べ2,822名という記録があります。
昭和31年12月、地元ユーザー15社、メーカ6社、大学2校が発起人となり、 「会員相互の連携、親睦と計装技術の発展向上」を目的とした、新しい計装研究会が正式に 発足しました。
発足式(34回例会)には、安川電機の講堂で、東大の高橋安人先生が 「オートメーション・自動制御・プロセス特性」という記念講演をされました。
計装研究会は当時から、会社工場、公共体、(昭和47年から大学学科が加わる) の組織体を会員(後に、教員その他の特別の個人にも拡張)として構成され、 その運営は地元5社工場〔新日鉄(当時八幡製鉄)、九電、旭硝子、三菱化成、安川電機〕 (後に旭硝子は住友金属と交代)が毎年持ち回りで会長をつとめ、 幹事20名〔地元ユーザー9社、地元メーカー2社、メーカ代表2社(毎年交代)、 後に大学3学科及び部会主査4名が加わる)によって行われています。
設立当時の幹事会はさながら技術討論会のようで、企画が山積し、 毎月例会を開いても消化しきれなかった程でした。
昭和32年4月には自動制御研究会10周年大会に来訪されたUOPのBoyd氏の 「プロセス制御最新の進歩について」という講演、昭和33年には、当時、 CIAの招待で米国を視察された生産性本部計量管理視察団(団長山内二郎先生) の新知識の話がありました。
昭和34年には、当時、毎年東京で開催されていた電気計測工業会の展示会を招待、 八幡製鐡大谷会館で開催し、同時に計装保守に関する討論会を開き、 参加者115名という大盛会でした。
この頃が、計装研究会の初期の最も充実していた時期でした。
昭和35年になると、各社とも、社内に計装に関する正式組織が出来、 業務が多忙になってきたために、例会は隔月開催ということになりました。
昭和36年には、米国自動制御視察団が来訪、R.OIdeburger、G.H.Fettの両氏が講演しておられます。
昭和36年頃には、当時、日本計測学会、自動制御研究会、 自動制御協会と分立していた計装関係の学会を統合しようという機運が起こり、 大島康次郎先生から、計装研究会もこの際、合同しないか、というお誘いもありましたが、 学会は論文の発表の場でGIVE&TAKEができるが、 計装研究会は勉強の場で、TAKE&TAKEで、論文の発表意欲がないということで、 ご辞退したというようなこともありました。 昭和38年には、日本計測学会と自動制御研究会が合同し、計測自動制御学会が発足したように覚えます。
更に、昭和37年からは、各社共、技術者の中央集中が始まり、初期からの会の幹事も転勤等で交代し、 次第に企画力が弱まってきましたので、昭和39年には企画運営委員会をつくりましたが、 次第に企画が会長工場の幹事のみの肩にかかり、運営が困難になってきました。
昭和47年には、各社とも計装グループの業務は多忙になり、情報入手も計装研究会を利用しないでも、 独自に入手できるようになったので、計装研究会に対する期待も小さくなり、旭硝子が技術者中央集中により、 会長工場を辞退されたことが契機となり、 「計装研究会は解散するか」という会員アンケートをとることになりました。 しかし、反対が70%でしたので、新日鉄の研究所の芥田氏のご協力で、 運営方法検討の委員会をつくり検討の結果、「例会は幹事持回りで企画運営することとし、 更に企画力を高めるため、新たに幹事会議長として、毎年交代ではない主査を置くこととなり、 また、専門部会(通称部会)活動に力を入れる」ことになりました。
現在までに、設置され終了した専門部会は、 「粉粒体計測、計測管理、防爆計装、環境計測、省エネルギー、マイコン」の六部会で、 現在活動中の部会は、「理論、保全、計測、品質工学」の四部会です。
昭和51年11月15/16日には、設立20周年記念大会(第165回例会)が理論、保全、環境の 3部会の企画によって行われました。
昭和52年1月には、20周年記念行事の一環として計測自動制御学会九州支部と共催で 「マイクロプロセッサの基礎と応用」講習会を実施し、187人の参加を得、 マイクロコンピュータ実用化の初期の状況として、印象に残っています。
昭和56年4月には、カリフォルニア大学から豊橋技術科学大学に帰ってこられた高橋安人先生の 「マイコンを用いた現代制御理論講習会」を帆柱山荘で2泊3日の泊まり込みで実施しております。
昭和60年11月には、来日中のカリフォルニア大学名誉教授高橋安人先生をお招きして、 昭和56年の講習会の総仕上げとでも言うべき「パーソナルコンピュータによる制御理論」 の2日間の講習会を開催しました。
昭和61年には30周年迎え、昭和62年3月の総会で30周年を祝い、 今まで特にご協力をいただいた新旧幹事、並びに会の初期からご指導いただいた参与の先生がたに 感謝状を差し上げることが出来ました。
平成8年には、創立40周年を迎え、平成9年3月の総会では、(株)安川電機の講堂で、彫刻家 棟方志功の世界「彫る」の映写会を行い、40周年を祝いました。
最近の各部会の活動を紹介致しますと、昭和62年にそれまでのマイコン部会を発展的に改称し、 情報部会を発足させ、以来ニューラルネットワークや画像処理などの勉強会、講習会を開催しております。 理論部会では、勉強会や事例紹介の他、平成4年から6年にかけて熱プロセスを対象として、 プロセス制御技法のベンチマークテストの試みを行いました。平成6年には、 それまで計量研究所で主催していた新計量管理勉強会を引き継いで品質工学部会を発足させました。 また、保全部会でのテーマ討論会、計測部会での講習会など、 各部会ともそれぞれの部会のテーマに適した活動を積極的に行っております。
表1は計装研究会の昭和28年9月から今日迄の活動状況をその性格別に分類してみたものです。 これを見ると、システム技術の実務者の関心が時代と共にどの様に推移して来たかが読み取れ、 興味深いものがあります。
昭和31年12月から平成16年2月迄の実績は
例会 : 回数322回、公演題目669件(参加人員毎回40~80名)
部会講習会 : (主催)59回、(共催、後援)10回
実技講習会 : 12回、見学会:51回、展示会:7回
会員数 : 58会員(平成16年3月現在、団体51、個人7会員)
という統計になります。
この会が今日まで続いてきたのは、会長工場並びに各工場幹事の御努力の賜ですが、 この間、計測自動制御学会九州支部とは車の両輪のごとき立場で、 地元技術者の技術研鑚の場として効果をあげてきました。
計装研究会は、元来、システム技術者の技術研鑚の場として出発したもので、 システム技術者は常に、各種システム構成の為の新技術を吸収、活用することを期待されており、 そのためには、自分の産業分野と異なる産業分野のシステム技術者と技術知識の交流が出来る この会は存在の意義は大きいと思います。
以上、本研究会設立の趣旨に御賛同の上ぜひご入会され、社業の発展の一助とされるようおすすめ致します。