研修2デジタル教科書、入試におけるタブレット利用の最前線とオンライン授業 ②ロービジョン者のためのデジタル教科書・教材、大学入試における合理的配慮、大学におけるオンライン講義の最前線   中野 泰志(慶應義塾大学)  我が国のロービジョンの児童生徒の教育を取り巻く環境は、教科書バリアフリー法(2008年)が施行され、拡大教科書の無償給与がスタートした後、大きく変化してきた。2010年にアップル社がiPadを発表したことを契機に、タブレット端末で教科書にアクセスする試みが行われるようになり、2013年には紙媒体の教科書と全く同じレイアウトでありながら、ロービジョンの児童生徒の視認性や操作性を考慮した「PDF版拡大図書」(中野ら,2014)の試作版が開発された。また、2014年には教科書・教材閲覧アプリ「UDブラウザ」(中野ら,2016)が試作(2015年から一般公開)され、教科書・教材のアクセシビリティが飛躍的に向上した。さらに、「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が2019年から施行され、学習者用デジタル教科書が制度化された。加えて、2019年には読書バリアフリー法が施行され、教材等の教科書以外の書籍をアクセシブルにするための基盤が整いつつある。これらの動向を受け、大学入試センター試験を始めとした試験のアクセシビリティも大きく変化しつつある。例えば、2019年度の大学入試センター試験以降、「受験上の配慮案内」にパソコンの利用が明記されるようになり、問題冊子をタブレット端末で閲覧することが許可される事例が出てきた。  本講演では、現在、ロービジョンの児童生徒が利用出来るデジタル教科書・教材、PDF版拡大図書、音声教材、UDブラウザ、入試でのタブレット端末の利用等について紹介する。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴って始まった大学のオンライン講義のアクセシビリティの現状と課題についても紹介する。 【略歴】 1984年 東京国際大学 教養学部卒業 1988年 慶應義塾大学大学院 社会学研究科 修士課程修了 1988年 国立特殊教育総合研究所 研究員 1997年 慶應義塾大学 経済学部 助教授 2003年 東京大学先端科学技術研究センター 特任教授 2006年 慶應義塾大学 経済学部 教授  現在に至る