研修1 手帳改正2年を経ての課題                仲泊 聡(理化学研究所) 身体障害者手帳の認定基準が、2018年7月1日から改定された。日本学術会議にて問題提起されてから10年、前回の基準改定から実に23年を経ていた。その大きな変更点は「両眼の矯正視力の和」が「良い方の目の矯正視力」になったことと自動視野計での判定基準が明確化されたことであった。法改定ではない、省令の改定の範囲での変更であった。公布前の1年間、当事者団体の代表を交えた「視覚障害認定基準に関する検討会」が厚生労働省主導で5回開催され、それまでの10年に日本眼科学会と日本眼科医会の関連委員会で揉まれた原案を検討した。主たる変更点は、原案に含まれていたが、この検討会における最大の修正点は、中心視野にだけ機能低下を有する者にも視野障害としての等級が割り振られたことであった。よって、前基準の下で不公平感を抱いていた、両眼とも0.2程度の視力低下をきたしている者の多くが救済されることとなった。しかし、今回の改定には、積み残し案件がいくつかあった。Functional Vision Scoreを使用すべきという意見、片眼失明を考慮すべきという意見、視力と視野だけでは評価できない視覚障害に相当する状態を考慮すべきという意見はもとより、視力と視野の基準についても法律の枠を超えた適正化を行うべきという意見があった。改定後2年を経過した現時点において、まずは新基準で改善された点と改悪された点を明らかにしたい。 【略歴】 1989年 東京慈恵会医科大学医学部卒業 1991年 東京慈恵会医科大学医学部眼科入局 1995年 神奈川リハビリテーション病院 2003年 東京慈恵会医科大学医学部眼科講師 2004年 スタンフォード大学心理学科留学 2007年 東京慈恵会医科大学医学部眼科准教授 2008年 国立リハ病院 第三機能回復訓練部長 2010年 国立リハ病院 第二診療部長 2016年 理化学研究所 研究員 2018年 理化学研究所 上級研究員